暖房が効かなくなった原因と修理法

こんにちは。カオルです。

ある日ヒーターの効きがわるいことに気が付きました。
アイドリング時にヒーターをMAXにしても、なんか微妙なぬるい風が出ています。
前はもっと熱い風が出ていたような・・・

近くのホームセンターで、ガラス棒の温度計を買って、通風口に差し込んでみると、38℃しかありません。
走行中エンジン回転が高い状態では暖かい風が出るけど、エンジン回転が下がるとまたぬるくなります。

ヒーターの構造は、エンジンの熱で暖まった冷却水をウォーターポンプでヒータコアへ流し、
熱くなったヒーターコアへブロワーで風を送ります。

ヒータコアの熱を奪った風はテンプレチャー・バルブ(冷たい風と暖かい風ミックスして、風の温度を調整しているフラップ)
で温度調整され、通風口から出て、暖かい風を出しています。

暖かい風が出てくるまでの順序を逆にたどって見ることで、トラブルシューティングを行います

①暖かい風が出ない⇒ブロワーの故障?⇒もしブロワーが故障していると、風自体が出てこないはず
⇒風の温度が低いだけで、風自体は出ている⇒ブロワーの故障ではない

②ブロワーの故障でないとすると、テンプレチャー・バルブが故障?
⇒もしバルブ故障でバルブが暖かい風を制限してしまっているとしたら、あり得ます。

③もしテンプレチャー・バルブが正常だとしたら、ヒーターコアが熱くなっていないのではないか?
⇒ヒータコアへ流れる冷却水の温度不足、もしくは流量の不足?
⇒冷却水の量は規定値まで入っているし、運転中の冷却水温は95℃なので、オーバークールなどによる
水温不足ではなさそうです。(もし水温が低いのなら、サーモスタット不良の可能性があります)

④となると、冷却水の流量不足?⇒ヒーターコア、ヒーターバルブの詰まり、あるいはウォータポンプの吐出力不足?
もしウォータポンプが故障しているとしたら、ラジエターへも冷却水が回りにくくなるので、オーバーヒートなどの症状がでるはずですが、水温は安定しています。⇒ウォータポンプが原因ではない

⑤ヒータコア、ヒータバルブが詰まっているとすると、エンジン回転を上げるとウォータポンプの回転が上がるので、冷却水の流量が上がり、暖かい風が一時的に出せる
⇒実際に起こっている現象と一致するので、ここが怪しいです。

エンジンルームから、ウォータポンプ~ヒーターコアまでの水路を確認します。
ウォータポンプからヒーターコアへ入るインレットホースの間にヒーターバルブらしきものがかませてあります。
暖房をMAXにした状態で、ヒーターコア~ウォータポンプへ戻るアウトレットホースと、インレットホースの温度差を手で触って調べてみる(写真上がアウトレット、下がインレット)と、インレットホースは触っていられないほど熱いのに対して、アウトレットホースはぬるい・・

冷却水の流量が制限されているため、車内のブロワーで熱を全部奪われて、
インレットに対してアウトレットホースの温度差が大きくなるわけです

⇒ヒーターコアorヒーターバルブの詰まりの可能性が大ということになります。
しかし、テンプレチャー・バルブの故障の可能性もまだ捨てきれません。

さて、考えられる原因は絞り込まれました

①テンプレチャー・バルブの故障
②ヒーターコアの詰まり
③ヒーターバルブの詰まり(画像はヒーターバルブです)

次は、疑わしい部分を点検し、さらに問題の絞り込みをします

①車内のグローブボックスと灰皿、トレイを外すと、中にテンプレチャー・バルブの
アクチュエーターが見えます。
写真奥のバーコードが貼ってあるのが、アクチュエーターです

②コネクタを外し、マウントボルト(9/32インチ×2)を外し、アクチュエーターを取り外します

アクチュエーターに動かされているフラップの根本が見えます(写真で二股に分かれているシャフトのようなもの)
ヒーターMAXの状態で、これを手で回して、手動でフラップを動かしてみます(大体65度位の可動範囲です)

フラップを時計回りで止まるところまで動かして、冷たい風が出ることを確認します。
フラップを反時計回りで止まるところまで動かして、暖かい風に切り替わることを確認します。⇒もしこれでしっかり熱い風が出るようになったら、テンプレチャー・バルブアクチュエータの不良ということになりますが、フラップを動かしてもぬるい風に切り替わるだけでした。
つまり、テンプレチャー・バルブの不良が直接の原因ではないことがわかりました

さて、残るは
②ヒーターコアの詰まり
③ヒーターバルブの詰まり
ですが、これは外から見ただけでは判定できません。

しかも、ヒーターバルブはホースにカシメられていて、単独で外せないようになっています。
カシメを切るグラインダーも持っていないし・・・

ここからは、推定してみて確率が高いと思われるところからやってみるしかないかな・・

ヒーターコアが詰まる確率と、バルブが詰まる確率を比べてみると
水路が小さいバルブのほうが確率が高いと思いました。

バルブやアウトレットホースをつなぐT型のアダプターははプラスチック製なので、劣化による亀裂が心配だし、ここはヒーターバルブ&ホースASSYの交換をしてみることにしました。

ヒーターホース(エンジン側)を発注しました。(品番10258504 ACデルコ)
(9600円+送料600円=10200円(ヤフーオークション)

①車をスロープで上げます

②リザーバータンクのふたを外し、ラジエタードレンコックを開いて、クーラントを抜きます
(下にバケツを置いて回収します。約6Lほど抜けます)

③ホームベース(レゾネータ)取り外し(1/2インチナット×2、バンド)

④エアクリーナーダクトを取り外し(コネクタ×2、ホース2)

⑤ファンシュラウド(上側)取り外し(10mm×6)

⑤ファンベルトを取り外し

⑥リザーバータンク取り外し(10mm×3、コネクタ1、ホース1)

⑦ヒーターホースをマウントしているボルトを外し(10mm)

⑧ウォーターポンプ側のホースを外します(上1、下1)
この時、下のインレットホースを外すと、クーラントが大量に噴き出してビックリしました。
下にバケツを置いて、ホースを外れるか外れないかの位置で少しずつ下へ排出、慎重に回収します。

⑨ヒーターコア側のホースを外します(クランプ×2)

⑩ヒータホースASSYを取り外します。

後は逆の順序で組み付けし、回収したクーラントをガーゼでろ過して注入します。

外したバルブが詰まっているかどうか、切り開いて確認してみます。カシメの下からホースを切断したら・・・

・・・ん?何かあるような・・

サビ?か水垢らしき堆積物の塊が出てきました。これがバルブの中に詰まり、流量を制限してしまっていたのかもしれません。

念のためバルブ自体も切開。

中は意外と単純な構造で、アストロのように冷却水の流れをON/OFFするようなものではなく、流量が過大になった時に水圧でばねが押されて、中の小さい穴が開いたバルブが密着し、水路を狭くすることで流量を調整する構造になっていました。

サービスマニュアルで確認したところ、これは正式にはフロー・リストリクターと言うようです、エンジンを高回転にしたときにヒーターコアへ流れ込む水圧が高くなりすぎ、ヒーターコアが破損するのを防ぐためについているそうです

ヒーターホース交換の時にホースを外した時、インレットホースの中に砂のような、サビのようなものが少量見られました。
どうやら、ヒーターコアが詰まっている可能性が高くなってきました。

ヒーターコアを交換するのは、コスト、工数ともに高いので、なるべくならやりたくないです・・・

というわけで、ヒーターコアの洗浄を、試してみることにしました

ヒーターコアの洗浄は、水道水をヒーターコアのアウトレット側から流し込み、インレット側から排出します。
冷却水の通常の流れとは逆に流動させることで、詰まった原因となるゴミを外へ出すのです。
(バックフラッシュといいます)

さて、私は特殊な設備は何も持っていないので、
近所のホームセンターで調達します。
・ガーデニング用のホース20m
・クランプ×5コ
・ホースの継手(15mm-18mm用)×2コ
・止水コック
・透明ホース(内径15mm)×3m
・ガーゼ
・輪ゴムいくつか
・スーパーのビニール袋

念のため、ストレートでラジエターフラッシュ剤も買っておきました。

ビニール袋、輪ゴム

ガーゼ

止水コック(TOYOX)

透明ホース(内径15mm、TOYOX)

クランプ(15mm-22mm)

①車をスロープで上げます

②リザーバータンクのふたを外し、ラジエタードレンコックを開いて、クーラントを抜きます

家の水道からホースを引っ張ってきました
止水コック、透明ホース、継手をつなげます

ヒーターホースをヒーターバルブ、T型アダプターから外し、ビニール、輪ゴムで栓をします
(青いのは、新品のヒーターホースASSYについていた異物防止用のキャップをつけてみました)

アウトレット側に水道からの透明ホースをつなぎ、インレット側には透明ホースのみつなぎ、バケツをおいて排出された水を受けます

(アウトレット側のホースが太くて、買ってきたクランプが使えなかったので、ここは元のヒーターホースのクランプで対処しました)

排出側ホースには輪ゴムでガーゼをつけておきます。
詰まった堆積物をここで受けることで、堆積物のありなしを判断します
このガーゼに堆積物がつかなくなるまで洗います

水を流します。もしヒータコアが詰まっていれば、ヒータコアから水と一緒に、堆積物が排出されるはず・・

1発目から、どばー と出てきました。

1発でガーゼが茶色に・・
これはサビ?水垢?わかりません・・そして謎の金属片が・・

水もこの通り。サビ色です

バケツの底にも堆積物が見えます

止水コックを開けたり、しめたりしながら、水圧に少しインパクトを与えることで、
また堆積物が出てきます。

時々止水コックから透明ホースを外し、息を吹き込むと、ごぼごぼ音がして、
さらに堆積物が出てきます。

(本当はエアーがあれば楽なんですが、もちろん持ってないので自分の息ですよ!)

堆積物の排出がなくなってきたら、アウトレット側とインレット側のホースを入れ替えて、逆方向に水を流すと、また出てきます。

排出が落ち着いたら、さらにラジエター洗浄剤を試してみます。

ワコーズのラジエーターフラッシュをつかってみました

水6~10Lに対して1本(500ml)使ってくださいとなっていたので、
2Lペットボトルに160mlほど原液を入れて、水で薄めました
これで多分いい濃度になるんじゃないかと・・

透明ホースに灯油ポンプをつなぎ、ペットボトルの洗浄液をヒーターコアへ送り込みます

洗浄液が出てきたら、2本のホースを輪ゴムで釣って、30分ほど置いておきました
ヒーターコア内を洗浄液で満たして、中のサビや水垢を取れやすくする作戦・・本来はクーラントに混ぜて、アイドリングさせる使い方なので、これでよいかどうかはわかりませんが・・

排出された洗浄液をバケツに回収し、再びポンプで吸い上げ、しばらく洗浄液を循環させてみました(吸い上げ側にもガーゼをつけて、異物の吸い込みを防止します)

洗浄液を回したら、再び水道水で洗浄を行います。
そしたらまた堆積物が出てきたので、順方向、逆方向と洗浄を繰り返します。

ガーゼに堆積物が付いたら、水で洗って付け直します。
ガーゼに堆積物が出なくなるまで洗浄します

ヒーターホースを戻し、クーラントを再注入して、エンジン始動。
水温が通常温度になるまで待ち、ヒーターMAXにします

結果は、53℃!直った!

これがヒーターコアから出てきた堆積物です。
サビ?というよりも、固まった土くれ?のような・・

そういえば2008年頃クーラントを全量交換したとき、GMから指定されていたシーラント・タブをいうものを入れたことがありました。

これは新車当時、製造時の鋳物に発生する「す」や微小な冷却漏れを防ぐ目的で、冷却水に混ぜて使えと指示されていたものです。

しかし最近のACデルコの情報によると、分量を間違えてラジエーターなどの冷却水路を詰まらせたり、冷却水にサビが浮いているように見えて、クーラントの良否がわからなくなるなどの不具合が多発し、
現在は推奨されていないようです。

今考えると、これも原因の1つだったのかもしれません。
むやみに冷却水の漏れ止めや、添加剤などは使わないほうがいいということですかね・・

出てきた堆積物を崩すと、シーラントタブらしき黄色い粉末に・・
サービスマニュアルに指示されていたGM純正品だから
信用してたのに~

ヒーターコア洗浄の費用・・・
ホース継手 ¥78×2
ホース20m ¥1880
止水コック ¥980
クランプ \88×5
ガーゼ ¥98
透明ホース¥220×3m
灯油ポンプ ¥78
(カインズホーム)
ラジエーターフラッシュ ¥1080(ワコーズ)
(ストレート)

合計¥5587

作業時間:3時間
でした。

ちなみに、こちらの画像はクーラーをMAXにしたときの通風口の温度。
サービスマニュアルでは10℃以下が正常とされているので、こちらは問題なさそうです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする